さかまろのサブカル感想保管庫

サブカルを中心に作品の感想などを載せていこうと思います。

『創作彼女の恋愛公式』ノベルゲームレビュー

こんにちは、さかまろです。

今回は記念すべき作品レビュー第1回ということで、Aino+Linksさんから2021年に発売されたノベルゲーム『創作彼女の恋愛公式』の感想です。

 

1、あらすじ

 

同人ゲームのシナリオライター、かつ、ライトノベル作家である主人公・鏡 寿季(かがみ としき)は、COLORLESSというライターのシナリオに打ちのめされ、スランプに陥っている。

スランプから脱出するために、同世代のクリエイターから刺激を受けるべく、寿季はノベル科、CG・イラスト科、声優科などを有する学園へ進学する。寿季は4人のヒロイン達と出会い、創作活動を通じて仲を深めていく。

やがて寿季は1人のヒロインと恋仲に至り、ヒロインと創作に関する障害を乗り越えていく───

引用元:「創作彼女の恋愛公式」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2023年11月14日 (火) 16:10 UTC、URL: 創作彼女の恋愛公式 - Wikipedia

※ネタバレを含みます。未プレイの方はブラウザバックを推奨します。

 

 

 

 

 

2、登場人物

 

鏡 寿季

本作の主人公。同人ゲームのシナリオライターであり、ライトノベル作家であるが、それ以外は平凡な男子高校生。現在スランプ中。

 

以降、ヒロインの紹介。

 

 

彩瀬 逢桜

本作のメインヒロイン。商業デビューを果たしているプロの小説家。主人公の幼馴染みポジション。

 

 

月見坂 桐葉

ヒロインの一人。人気の若手声優という顔を持ち自他共に認める美少女。ツンデレ毒舌ポジション。

 

 

凪間 ゆめみ

ヒロインの一人。新進気鋭のイラストレーターであるが現在引きこもり中。主人公の妹(従姉妹)ポジション。

 

 

雪妃 エレナ

 

ヒロインの一人。趣味で官能小説を書いているがHシーンを書くのは苦手。主人公の先輩ポジション。

 

 

 

 

3、構成

 

感想を語る前に本作の構成について。

 

共通√は8つのエピソードで構成されており、共通部分には殆ど選択肢がありません。よって、基本的にはテキストを読み進めていくだけのプレイスタイルとなっています。

 

そして、共通√を読み終わるタイミングで選択肢が出現し、それぞれのヒロインの個別√に飛べるようになっています。(Hシーンは勿論個別√にのみ存在します。)

 

さらに√攻略順も半固定状態になっており、メインヒロインの√は他の3√を攻略すると解放されます。

 

 

 

 

4、感想

 

  • 共通√

プレイ時間:約15〜20時間

共通√といえばヒロインの紹介、個別√の前座というイメージが強く、基本5時間ほどで終わるのが殆どですが、本作はかなり長めとなっています。

 

ヒロイン紹介としての共通部分はエピソード1までで、それ以降は各ヒロインの掘り下げに重きを置いた構成になっており、個別への地盤固めとしては十分過ぎるほど丁寧な作りでした。

 

『構成』でも書いた通りテキストを読み勧めていくプレイスタイル、かつ各エピソードクリア後にエンディングが流れる仕様となっているため、まさにアニメを見ているような感覚で読むことができます。

 

 

ここからは各個別ルートの感想です。

順番は私がプレイしたエレナ→ゆめみ→桐葉→逢桜の順で。

 

  • エレナ√

プレイ時間:約2時間

個人的にはかなり楽しめた√と言えるでしょう。

エレナは天才肌(中盤で実は人気シナリオライターのCOLORLESSであると判明する)の不思議系ヒロインであり、共通部分からも主人公に対してグイグイ来るタイプであるため、正直言って感情移入がしづらい所はあり、ノベルゲームに恋愛的な駆け引きを何よりも求める方には少し不評な√かと思います。

 

しかし、才能はあくまで凡人な主人公が才能で勝ち上がってきた天才に追いつくために努力し、時には迷走しても自分を見つめ直して人生経験を積んだ大人達の言葉を咀嚼しながら自らの方向性を模索していく過程は面白いと感じました。

 

主人公のライバル枠はメインヒロインの逢桜ではありますが、ライバルに追いつくため奮闘する物語としての面白さはエレナ√の方に軍配が上がるかと私は思います。(寿季からエレナへの一方的なライバル視ではありますが……)

 

  • ゆめみ√

プレイ時間:約2時間

今作の個別の中では比較的平凡な√に落ち着いたなという感想です。それも、ゆめみの一番の障壁であった不登校という要素は共通部分で既に解消されてしまっているのです。よって個別√では必然的に恋愛描写に重きを置いた構成となっております。

 

他√や共通√では寿季に対する恋愛感情を自覚することが無かったゆめみが唯一自らの気持ちに気付くことができた√ということで、恋愛感情が芽生えてから付き合うまでの一連の流れがこの√の中で行われます。恋愛パートが濃厚であることは良い部分だと思いました。

 

しかし、個人的にはもう一押し欲しかった...。寿季と付き合ったことで、現実逃避する必要が無くなり、イラストが描けなくなるという問題は発生しましたが、案外すんなり解決したので少し力技にも感じてしまい、物足りなさを感じました。

 

  • 桐葉√

プレイ時間:約2時間半

私が個別で一番好きなのがこの桐葉√です。どの√が好きかと問われたら迷わずこの√と答えるでしょう。それもそのはずヒロインのビジュアル・性格・ストーリー全てが好みと合致したんですよね。

 

特に桐葉からの告白シーンは最高です。声優としての成功が約束されたようなものである大物との結婚を蹴ってまで主人公を選ぶ流れが激熱なんです。私の場合は特にこの√を後回しにしていたため、他√で主人公に対する自らの想いに気づきながらも他人の背中を押してきた桐葉がようやく報われたと感動もひとしおでした。

 

さらにこの√は寿季のムーブも素晴らしかったです。彼女にむやみに優しくせず、その時々に合った彼なりの接し方を心掛けていて、素直に凄いなこの主人公と思いました。

また、桐葉が精神的なショックで失声症になった際には、彼は桐葉の為に自分の思いを乗せたシナリオを読ませて治療を試みます。

後の逢桜√で桐葉は、クリエイターや役者にとって最も闘志に火が付くのは良きシナリオと語っています。寿季は桐葉にとっての正解を引き当てた訳ですね。

 

最後の最後にクリエイター然とした解決方法を出してフィナーレという良い終わり方でした。ゆめみ√に足りなかったもう一押しも見られた素晴らしい√でした。

 

  • 逢桜√

プレイ時間:約2時間半

作品を代表するメインの√です。

結論から言うとこの√限りなくバッドに近いハッピーエンドです。

私個人としての感想ですが、心では理解出来たけど頭では理解出来ないという本来とは逆の現象が起きました。

 

海外留学に行ったと思っていた逢桜が実は余命僅かで……というところからこの√は始まります。そして突き付けられた問題は、早期に手術し自らの命を取るか、今しか出来ないASのシナリオに専念して命を燃やすかの二択

クリエイターである逢桜が取った選択はもちろん後者でした。逢桜の考えは、奇跡はいらない、クリエイターの彩坂桜として生を全うしたいというもの。最後まで目の前の創作物に全力でぶつかって、命を燃やしながらも一貫してクリエイターとしての人生を全うしようとする彼女は素直にカッコ良いと思えました。

 

しかし終盤、少しずつ逢桜の体を蝕んていた病魔は遂にクリエイターの商売道具である手を侵し始めます。それでも、動かないなら寿季が君の手になるよ、と代筆を買って出る場面はこの√最大の盛り上がるシーンでしょう。私もここで感極まりました。

 

そして、遂に物語は幕引きです。逢桜が亡くなったことはぼかして表現されていましたが、奇跡なんて無い、最後までクリエイターで居られた、とこのことから逢桜が既にこの世に居ないことが示唆されています。

 

さて、この終わり方ですが私としては2人の未来が約束されているエンドの方が腑には落ちますよ。でも、最後のCGイラストの寿季と逢桜の背中が清々しかったんですもの。二人が納得した終わり方なら良いかと満足していた自分が居たんですよね。

 

私はクリエイターでは無いのでクリエイターの考えというものを完全には理解していません。悠真と同じように今でも命が一番大事という考えは変わりません。それでも逢桜のクリエイターの生き様というものが心で理解できました。それ程に彼女は死の間際でもエネルギーに満ち溢れて輝いていたんです。

 

頭では理解出来ずとも心で理解出来たというのはこういうことです。賛否両論あるそうですが、私は賛成派でした。

(プレイ後、他√での逢桜の結末を想像して軽く鬱になったのはここだけの話…)

  • アペンドシナリオ

アペンドシナリオは逢桜√以外、イチャイチャしてHしてイチャイチャと基本の構成が同じなので省きます。

 

逢桜のバッドエンドアフターですね。

こちら結論から言うと、逢桜に奇跡が起き、手術に成功して生き延びる、他のゲームで言うところのグッドエンドです。何故バッドなのかというと、逢桜が望んでいなかった奇跡が起きてしまった世界線だからと解釈できます。しかし、生き延びた奇跡の代償として逢桜は書けなくなりクリエイターとしての死が訪れました。

 

個人的な好みですが前述の逢桜√よりこちらの√の方が私は好みです。

クリエイターとしての死=未来に向かって歩むことが出来ない抜け殻の状態だと思っていたので、アペンドの中盤までは本気でバッドエンドかもしれないと身構えていました。しかし、二人で応募したコンテストで寿季だけが最優秀賞を獲ったことで、逢桜の心に再びライバル心というものが芽生えます。(創作意欲はまだ戻っていない)

もう少しだけ足掻いてみせるよ

このセリフのお陰でこのエンドもまだ希望があるんだと安心できました。

クリエイター魂が失われて抜け殻状態になっても、また1から二人で歩み出すという選択肢があるのなら、これ以上に幸せなことはありませんよね。

 

 

 

 

5、まとめ

1万円近くする為、フルプライスとしてはお高めといった価格設定ではあるものの、全体的にクオリティが高くプレイバリューの高い作品でした。

流石、大賞受賞作は伊達じゃないですね。(どこかの天パMSパイロット風)

不満点を挙げるとすれば不具合と誤字が多いことくらいですが、私はあまり気にしないタイプなので問題ありませんでした!!

 

それはそうと、創作彼女の恋愛公式のメンバーによる新作、アンラベル・トリガーを皆さんご存知ですか?

所属企業もブランドも変わっていますが、正真正銘同じメンバーによる次回作となります。

とても楽しみですね!!!!!

 

 

それでは、改めてここまで読んでくださった方へ心より感謝します。

次回はアンラベル・トリガーのレビュー記事をあげようと思っているので、気になる方は見に来て頂けると嬉しい限りです。

ではでは!!